傘寿の由来や風習から贈り物

日本には古くから長寿をお祝いする風習がありますが、これは中国の儒教の影響を受けた文化だと言われています。

儒教には、長生きを尊いものと考え、老人を敬う思想があります。

この思想を受けて中国から日本に長寿祝いが伝わったのが、平安時代の頃。初めは貴族の間で流行したそうですが、その後民衆にも定着していきました。

しかし、長寿祝いといっても昔の人たちは短命で、平均寿命は40歳程度でした。

そのため、40歳を迎えると家族や親戚が集まって祝いの宴を開き、その後は10年経つごとに「年祝い」を開いたそうです。

日本人の平均寿命は現在、男性では80.79歳、女性では87.05歳（平成27年厚生労働省発表※）です。

長寿祝いは61歳（満60歳）のお祝いである還暦からスタートしますが、60代・70代と言えば、現在では「老人」と呼ぶことがはばかられるほど、ハツラツとした方が多くいらっしゃいます。

長寿の祝いが、日本文化として広まり始めた当時と同じ重みをもつのは、80歳の傘寿のお祝いからと言っても良いのかもしれませんね。

80歳のお祝いを「傘寿」と呼ぶようになった由来は、傘の略字である「仐」が縦に八十と読めることからきています。

ちなみに、80歳の次の長寿祝いは81歳の半寿です。

「半」の字を崩すと八十一と読めることがその由来となっています。

長寿の祝いの中でもあまり聞きなれない人が多いのは、傘寿からたった1年しか経たないために、ほとんどの地域ではあまりお祝いされないからだと考えられます。

一般的にあまり取り上げられない「半寿の祝い」ですが、実は、将棋の世界ではよく知られています。

将棋盤のます目が81（＝縦9×横9）であることから、将棋界では半寿のことを「盤寿（ばんじゅ）」と呼び、親しんでいます。

もし傘寿を迎える方が将棋好きのおじいちゃんならば、満80歳を数えで81歳と考え（長寿のお祝いは数え年で祝うものですが、最近では満年齢で祝う方も増えています）、傘寿のお祝いと一緒に「盤寿」も祝ってはいかがでしょうか。

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※平成27年簡易生命表の概況「1 主な年齢の平均余命」—厚生労働省

長寿祝いには、それぞれのお祝いを象徴する色があり、それにちなんだ物を贈る風習があります。

傘寿を象徴する色は「紫」。紫は高貴な色、気品がある色として、古くから親しまれてきました。

特に「深紫」と呼ばれる濃い紫色は、平安時代の禁色（きんじき）にも定められた色です。禁色とは、天皇や皇族が着用する袍の色を、一般の臣下が用いることを禁止した制度のことを言います。

また、傘寿のお祝いには、名前にちなんで「傘」を贈る風習もあります。

そのほか、長寿祝いの贈り物としては、ちゃんちゃんこや頭巾、扇子、座布団なども一般的です。

例えば、ご本人に、散歩に出かけたり旅行に出かけたりする趣味があるのならば、傘はベストな選択だと言えるかもしれません。

その場合は、雨傘でももちろん良いですが、ちょっとオシャレな「よそゆきの日傘」も素敵です。

しかしながら、80歳ほどのご高齢になると外出を控える方もいらっしゃるので、贈り物に関しては風習にあまりこだわらず、ご本人のライフスタイルや好みに合わせるのが良いでしょう。

色についても、ご本人が他に好む色があるのならば、もちろんその色の物をプレゼントしてかまいません。

「あまり実用的ではないけれど、傘寿のお祝いの贈り物とは別に、記念として伝統的な品を贈りたい」という場合は、扇子や座布団などにはぜひ、濃い紫色を取り入れてみましょう。

傘寿を迎える方への敬意を表す色として、これほどふさわしい色はないと言えます。ご本人にもいろいろとリサーチしながら、最適な贈り物を選んでいただければと思います。